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何回目かのフライトの晩(完)

大丈夫!全年齢だよ!腐ってるだけだよ!
ピアジャコ馴れ初めSS!第5回
 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

「――俺も、ここで、戦う。銃ぐらい使えるわ」

我ながら物凄い決心で言ったつもりなんだが、あっさり一蹴された。

「君ね…。ここで僕に味方したら、今度は敵方から、
 こちらの組織の一員なんだと見られますよ?
 こっち専属ワイバーン便なんだなってね。
 裏社会の一員と認識されて、家族も巻き込んで襲われます。
 君は絶対に、僕の味方をしちゃいけない。
……1週間後、定期便のフリするだけなら、辛うじて言い訳できるかな。
 あと、強いて言うなら、ここでの騒動がどんな風に伝わったか、
 近在で情報収集でもしといて下さい」

「…それだけかよ…」

俺は心底落胆したが、相手の言うことは尤もだった。
家族を巻き込まれるのだけは絶対に困る。

                          ~続く~




1週間なんてとても待てなかった。
かと言って竜を飛ばす訳にも行かず…、
行商人の集まる宿や酒場でそわそわしながら、
それらしい話に耳を傾けていた。
そしてすぐに、「山間の村で看護婦が1人撃たれて死んだらしい」
という話を聞きつけた。
これ、多分、間違いねえよな…。だけどまだ安心できねえ…
アイツ女顔だし、変装してたかも知れねえし…
「俺、明日山の方に向かうつもりだったんだけど、
 物騒な話だよな。何が有ったか、知ってること聞かせてくれよ」
トレードマークの青服も封印して、場末の酒場で話を聞いた。
銃を持った連中が大量に診療所を襲撃して去っていった、
って話だった。
敵が無事に去っていったのだったら、戦った相手は……。

1週間が待ち遠しかった。







1週間経った。運ぶ荷は、大量の薬とリザードパウダー。
これでもう間違いない、ジャコーは生きてる!
ソルを急かして、山間へ飛んだ。
診療所に行ってみると……。
ひどい有様だった。
漆喰壁のど真ん中に撃ちこむような下手糞は居なかったようで、
つまり建物の縁や開口部の縁がボロボロに崩れている。
窓ガラスも殆ど無い。
触れば崩壊しそうだ。
木造の納屋は納屋で、板壁は簾みたいになっていた。

だが、随分風通しが良くなってしまったせいで、
中で人が立ち働いているのが見えた。
看護婦――以前にも顔は見ていたが、少し凛々しさを増した気がする。
俺は薬を持って診療所に入っていった。


元々はただ歩けないから寝ていただけのジャコーは、
今は全身に銃創を受けて完全に寝たきりになっていた。

「テメー……、生きてんじゃねぇか」

「はい、お陰さまで…」

流石に話すのも辛いかと思いきや、舌だけは元気だった。
神よ、あんたは少し物の配分が下手な気がするって言われねぇか?

看護婦が居なくなってから、噂の事を話した。
「銃を持った連中が大挙して来て、看護婦が1人亡くなった、って
 下の街で聞いた」

ジャコーは何とも言えない微笑を浮かべ、
しばらく天井を見つめて黙っていた。
そしてゆるゆると、息を吐き出すように静かに、

「…『撃つか死ぬか選べ』と言った後、医師ともう1人の看護婦は
 動きが変わりました。
 亡くなった彼女は、違った。優しい人だったのでしょう」

確かに、誰にでもできることじゃない。
だが、できなきゃ生き残れないことがある。
それでも、生き残った2人にとっても、辛い選択だったろう。

「…っていうかそもそも、お前1人で戦うんじゃなかったのかよ?」

「…えー、そんなの無理ゲーじゃないですか。
 というより、この村が仲間でない証明をするためには、
 事前に襲撃の話なんかしちゃダメじゃないですかー」

「狸野郎。関係ないなら村から逃げるように
 言うべきじゃなかったかよ」

「ところがどっこい…、逃げた人の中に幹部格が居るかもしれませんね?
 どっちにしろ、何も知らない状態で、襲撃に驚き怯えた顔をして
 持ち堪えるしかなかったんです」

「…確かに、そうかも知れねぇ。で? 敵は?
 納得して帰っていったのかよ?」

そう聞くとジャコーはフッ…と満足そうな笑みを浮かべ、
ちょっと間を置いた。多分、敵とのやりとりを思い出している。

「ええ。最後の1人に伝言を…。
 僕自身もまた療養場所を変えるから、この村の事は忘れろと。
 無意味だとね。優しく教えてあげましたよ」

「優しくって…」
ぞくっとした。
「ぜってー優しくなかっただろ、お前」

「そりゃあまあ、こっちだってズタボロの状態ですからね。
 一線超えてハイになっちゃって、凄い笑ってましたけど」

うおお…またぞくっとした。
本来、友人が生きていて喜ぶべきところが、素直に喜べねえ。

「……なあ。」

俺は自分の心労も込めて話しかけた。

「はい?」

「……もう、危ない仕事、しなくて済めばいいのにな」

「…、今回は僕のミス……というか詰めが甘かったのが発端なので。
 これからは、ここまでひどいことには……多分」

ああ最低だこいつ……。
ヘラヘラ笑ってやがる……。
次からはずっと上手くやれると思ってる。
俺は頭を抱える。

「もう嫌だって……友達が、死ぬなんて、嫌だぜ……」

ジャコーは、慈悲深いとさえ言える表情で俺を見て、

「君も優しい。でも、ね。人はいつか死ぬんです。
 実際、その覚悟をして毎日生きている人もいる。
 僕なんかもそうですが……。
 そう、君の友人のジャコーはそういう人間なんです。
 僕を惜しんでくれるのは本当に嬉しい。
 ですが、割り切るしか、ないんです。レン」

……何となく分かる。
っていうか、どんな仕事してても、事故で命を落とす可能性はあるし、
そういう意味ではどんな人間でも、
もしもの時の覚悟はしておくべきなのかもしれねえ。

俺は暫く頭を抱えたままじっとしていたが、
何か、納得してしまった。
ジャコーっていう生き方に。

もう、ジャコーの髪がどんなにサラツヤでも、
心が跳ねたりしないんだろうな。
こいつは裏社会で何かの役割を背負ってて、
比較的自由に動けるけれども、いざとなれば人も殺せる、
表通りを歩けば自警団や憲兵団とは犬猿の仲で、
賄賂を贈ったり、もしかしたら贈られたり、
そんな関係なのかもな。

納得した。
ジャコーは悪だ。
しかも覚悟が出来てる。
仕事上、乗せることもあるし、飯も一緒に食うけど…、
友達では…。
友達にしておくのは…。

「レン? どうしたんですか? 黙っちゃって」

「んぁ? いやだから…」

俺は思ってたのと違うことを言った。
でも、考えてみればこっちが本心だ。

「…もう、危ないことしないで欲しいなと」

「無理だって言ってるじゃないですかー」

「…だなー…」

割りと本気で納得した。

納得した辺りで、看護婦が見に来て、ジャコーも疲れたみてぇなんで
俺は帰ることにした。

来週も、定期便、それとも転院の依頼が来るだろう。

結局3ヶ月かかって、コイツの足は元通りになった。
それまでにかかった借金は100万G以上だと。
どえれぇ事で。
で、その借金返すために、冒険者の仕事もするんだとさ。
当然馴染みの俺も呼ばれる。
でもこっちの仕事なら、俺も手伝っていいんだな、
そう思うと結構、気分が軽くなる。
冒険者の時のジャコーは悪じゃねぇ、っていうか…。

そんな感じで、また、気づいたら仲良さそうになってて。
俺の警戒心も緩んでて。
ついでにジャコーの、決戦前の告白、忘れてたんだよなあ……


ある冒険依頼にニケツで帰る時に、
後ろでジャコーが、やたら切羽詰まった声で言った。

「……あーっ、もう我慢出来ない!!」
「な、何だよ……びっくりすんだろ。
 トイレか? 降ろしてやろうか?」
「違いますよ鈍感」
「……?」

ジャコーが1人呟いているのが聞こえた。
「……今日こそ食べちゃおうかなあ……」


                          ~Fin.~
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