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何回目かのフライトの晩(5)

大丈夫!全年齢だよ!腐ってるだけだよ!
ピアジャコ馴れ初めSS!第5回
 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

花街を出て、いつもの安宿に戻りながら、
ジャコーへの好意を胸にしっかりと刻み込まれた夜だったんだ。

                          ~続く~


次に呼びだされたのはいつもと同じ1週間後。
定期便、と思ったら、どうもおかしい。
運びの荷物がまずおかしかった。
リザードパウダーは持たされなかった。
ライフルを10挺。拳銃がゴロゴロ入ってるトランク。
荷渡し人はわざわざトランクを開けて中を見せた。
意味は分からなかった。


天気の良い日で、車椅子で散歩でもしたらいいんじゃないかって日に、
ジャコーは受け取った大量の銃を病院のあちこちに設置して回っていた。
ちなみに俺が車椅子を押している。
流石のジャコーも緊張した表情で、俺も話を聴きづらかったが、
それでも何も聞かないでいることは出来ない。
「……おい……、何があったよ……」
俺が恐る恐る聞くと、
「……まあ、簡単に言うと、居場所がバレた上に、
どうもこの村が僕らの組織の拠点だと勘違いされているようで、
大規模な襲撃がありそうなんです」
「……逃げねぇのか」
「逃げるとすると君のワイバーンを使うしかありませんが、
今回、僕の組織の上から君が疑われています。
君がこの場所を対抗組織に漏らしたと。
まあ、そうでなくても竜は目立ちますしね」
「なっ……!」
「僕も流石にフォローしておきました。君に限ってある訳がない。
あるとしたら精々歓楽街で、『足を怪我して歩けない友人の、
毒舌がうざくて死にそうだ』と愚痴を漏らしたくらいでしょう」
「……え……」
「別に悪いことじゃない。たまたま、店か、店員が悪かったんです。
君のせいじゃありません」
緊張していたジャコーの表情が徐々に落ち着いて来ていた。
深い紫水晶の瞳で、俺をじっと見上げる。

「まあ、そんな訳で……、襲撃があったら、僕はここで孤軍奮闘。
 この村は僕の組織と関係ない、と相手に納得してもらった上で、
 全員あの世に行って頂きます」

顔色がいつにも増して白い。幽霊のように白い。

「1人で……? 何で…。組織の援軍はねぇのかよ」

「ありませんよ。僕は一番の下っ端なんです。
 僕を助ける為に上官が斃れでもしたら本末転倒の大損害です」

「そんな…、1人じゃ、勝てるものも勝てねぇじゃねぇか…」

言葉を失う俺に、ジャコーは何やら優しげな微笑みを向けてきた。

「……いいんですよ。君には言っていなかったけれど、
 僕は奴隷の身分です。ただまあほんのちょっと銃の腕がいい、
 というだけで、色々仕事を任せてもらえたりしましたけれど。
 奴隷に、最後の大舞台を演出させてくれるなんて、
 優しいじゃありませんか。
 今までのリザードパウダーだってそうです。
 あれ、僕の借金になっては居ますけど……、
『生きたい』と言ったら生かしてもらえた。
『傷を治したい』と言ったら、よく効く薬を手配してもらえた。
 僕の組織は優しいです。
……死ぬべき状況が訪れたからといって、
『死にたくない』なんて言えません。
恩を返すために全力で、僕の腕を発揮してやりますよ。
……それに、ほら」

ジャコーは、少しだけ邪悪に笑った。

「僕の得物。こんなに沢山用意してもらえた。僕の銃。僕の……」

人間が「物」に向けていい笑顔じゃなかった。
重度の銃フェチ、なんてもんじゃねぇ。
こいつは銃を舐めるだろうな。愛してるからな。
それ以上のこともするだろうな。何せ愛してるからな。
実際、目の前で、膝に抱えていたトランクを開けて、
一挺取り出しては舌を絡めるようなキスをしていた。
……はあ、やっぱりこいつはおかしい……。

少し疲労を感じたが、その最後のトランクを、
自分の普段の病室に運びこんで、設置作業は終わりのようだった。

「お疲れ様です」

車椅子を押して歩いていた俺に、ジャコーが礼を言う。

「……礼とか……」

俺の気持ちはそれどころじゃねぇ。
友達――と思っている人間が死ぬかどうかの瀬戸際で。

「――俺も、ここで、戦う。銃ぐらい使えるわ」

我ながら物凄い決心で言ったつもりなんだが、あっさり一蹴された。

「君ね…。ここで僕に味方したら、今度は敵方から、
 こちらの組織の一員なんだと見られますよ?
 こっち専属ワイバーン便なんだなってね。
 裏社会の一員と認識されて、家族も巻き込んで襲われます。
 君は絶対に、僕の味方をしちゃいけない。
……1週間後、定期便のフリするだけなら、辛うじて言い訳できるかな。
 あと、強いて言うなら、ここでの騒動がどんな風に伝わったか、
 近在で情報収集でもしといて下さい」

「…それだけかよ…」

俺は心底落胆したが、相手の言うことは尤もだった。
家族を巻き込まれるのだけは絶対に困る。

そうか、俺も冒険者の手伝いはしたこともあるが、
コイツの手伝いは一度もしたことがなかった。
しないように、手伝わないように、関わらないように、
コイツが気を使ってたんだ。

…ああ、いや、最初は……、
俺が距離を置いてたんじゃねぇかよ……
それがいつからこうなった。

俺はホントもう泣きそうで、ジャコーの顔も見れなかった。
俺が押し黙ってしまったのでジャコーも困ったのか首を傾げ、
何か言い出した。

「ねぇ、レン。僕、もう死ぬかもしれないんですよ。
 キスしていいですかキス」

「え?」

こいつが男も行けるとは聞いたことが無かった。
あったらもうちょい警戒してる。

「何で?」

多分俺の聞き返し方もおかしい。
それに真面目に答えるジャコー。

「だって!! もう死ぬんですよ!! 寂しいです!!
 レンは僕の友達じゃないんですか!!!!!」

「……!!」

友達だって。
俺、ジャコーと友達になりたかったんだ。
騙されてるのかって思ってたけど、騙されてなかったのかな。

「むしろ俺が聞きてえわ。お前、俺の友達なの?
 友達のフリして笑ってたんじゃねぇの?」

この期に及んで、ずっと気にかかっていたことを尋ねる。

「違いますよ! めちゃくちゃ面白いオモチャとして
 ちょっとからかいすぎた時もありましたけど、
 僕、レンのこと凄く好きですから!!!
 死ぬ前に、……キスくらい……、したいんです……」

金色の眉根を寄せて、ジャコーもちょっとだけ泣きそうな顔になってた。
からかってるとか、騙してる余裕なんてなさそうだ。
つまり、本心だ。

キスは正直どうだろう……、って感じだけど……、
でも、明日にもこいつは死んでしまうって言うなら、
答えは決まってる…としか言いようがない。

「……俺もお前のこと結構好き。キスするかね」

何かあんまり男らしくない感じで言ったけど、

「はい!!」

相手が凄い食いついてきた。

あー、そうなんだー、こいつはキスがしたかったのかなー、
などとぼんやりしてる間に、
こいつの性格にしては控えめなキスは終わってた。

「え? あ、もう終わったのか」

「レ、レンが嫌かなと思って……。じゃあもう少しだけいいですか」

「え…、あ…、まあ…」

ぼんやりしていたさっきと違って、まじまじと、相手の顔を見てしまう。

金糸に縁取られた紫水晶はひたむきに俺の口元を見て顔を寄せてきて、
ぱさ、と音を立てたまつ毛が紫水晶を隠す。
最初そうっと触れた唇が、次第に音を立てて相手を啄もうとする。
そんなバーズキスをしてる間に、ジャコーはいつしか涙を流して、
「……、レン……好きなんです……ごめんなさい……好きです……
 うううう~」
大号泣始めた。困った。
この場合泣くべきは俺を好きとかじゃなくて、
1人で敵の襲撃を凌げるか分からないところだろう…。
死にたくないって泣くべきじゃないのか。
だけどまあ、こいつを待ってる運命が過酷で、
俺も手伝ってやることが出来ない以上、
俺にしてやれるのは泣いてるコイツを抱きしめてやることくらい、
なのかな~、ってんで、友達だし、ハグってやった。
泣いてる顔は、胸につけて涙を吸い取るようにして。
あ、意味分からん伊達眼鏡は外した。

泣いてるジャコーを抱きしめて、あやすように揺らして、
おでことか頬とかキスしたり触れたりして、
何か子供あやすみたいにして何とか落ち着いてもらった。
保父に向いてるかもしれん。

そして、ようやく気を静めたジャコーは、
これで笑ってお別れかと思いきや、最後の爆弾を用意していた。

「…………最後だと思って言いますけども」

妙に仰々しく切り出す。

「僕は両刀です。で、そーいう意味でレンの事が好きです!」

そんな予感はしていた!!

「結婚しろとは言いません!
 恋人になるのもリスクあります!
 だから、ただの友達でいいんです……
 ただ、好きだってだけで……」

横を向いて、口を尖らせて、スネたみたいに斜に構えて、
そしたら俺の麗しの金糸の髪が。
凄くいい角度で肩から胸に落ちて。

とても美しい絵になっていた。
俺もこの男なら好きになっても良いかな、とちょっと思えた。
ちょっとだ。
あくまでも、ちょっとだけだけど。


                          ~続く~
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