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何回目かのフライトの晩。(4)

大丈夫!全年齢だよ!腐ってるだけだよ!
ピアジャコ馴れ初めSS!第4回
 ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇  ◇

その日は、ワイバーンライダー用の安宿に泊まって、
壊れた青いガラスみたいな気分で過ごして、
次の日からは別の町へ移って仕事した。


                          ~続く~


あの傷だと、どんだけリザードパウダー使っても
1ヶ月以上かかるだろうって読んでたんだが、
あの後たった2週間でお呼びがかかって驚いた。
むしろついにおっ死んだかと思ったぜ。
喪服持ってないからどうしようかと思った。

とりあえず生きてはいたわ。
だが、退院でもなかった。
削げた肉は半分も戻ってなかった。
当然歩けない。

何かというと、転院だ。
抗争相手に居場所がバレたようだから、また別の町で療養すると。
ちょっと痩せたかな。
俺は相変わらず、手入れが行き届いていないはずなのにサラツヤな
絹の金糸を眺めながら、今度はきちんと
クッションを敷いたゴンドラを使ってジャコーを、
少し離れた、山間の街へと移動させた。
治療はリザードパウダーに頼る、と決めたら、医者の腕はどうでもいい。
俺がリザードパウダーを定期的に運ぶことになった。

流石裏の組織、用意されたパウダーの純度は並じゃなかった。
値段は相当張るだろう。
そして、使用の際の激痛も、相応なものだろう。
俺が、運びを頼まれても居ないのにジャコーに届けたのは、

山のような鎮痛剤だった。
ジャコーはそれを見て、何だか呆れたような笑顔で、
「君は人が良すぎます。人生でもう何度も騙されてるでしょう」
なんて言うから、
「全ッ然そんなことねえし。騙されてなんか。
 代金取りっぱぐれもねぇよ!」
と返した。アイツは最早憐れむような笑顔でしみじみ俺を見てやがる。
で、気がついた。
……そっか。俺、ジャコーに騙されてたんだ。
友達になったフリされて、実は全然そんなことなかったんだって。
流石に、バカみたいだ、と思った。
胸の中でガラスは割れなかったが、
白いハンカチが泥水に落ちるイメージが強く脳裏に焼き付いた。
女の子が使う、縁が貝殻みたいな波になった奴。
ジャコーはそんな俺を見ても何も言わなかった。
しょんぼりして、その日は帰った。


1週間に1回、純正品のリザードパウダーと鎮痛剤を運んだ。
病室に入ると、アイツはベッドに寝ていたり、
椅子に腰掛けていたりしたが、いつも1人で、表情のない硬い顔を
していた。だが、俺が病室に入る瞬間、作り笑顔を貼り付ける。
その作り笑顔も、以前と比べると随分力ないものになっていたが、
それも、結局、演技なんだろうか。
体力が落ちてるのも間違いねぇだろうし、半分演技、半分真実って
とこが正しいだろうか。

「……無理して笑わなくていいよ。
 痛えだろうし。別に楽しくもないだろうし」

俺がそう言うと、意外にも奴は片眉を上げてニヤリ、と、
多分本心の笑みを見せた。

「何言ってるんですか。
 社交辞令で笑ってみせるのは当たり前です」

……この野郎。

「……社交辞令かよ!!
 つかはっきり言うなー……」

呆れて物が言えなくなりそうだ。
一方ジャコーは、

「いやあ、君になら何言ってもいいかなって……。
 髪の毛触らせてあげた仲じゃないですか」

やばいこいつの笑い上戸に火が付きそうになっている。

ヘラヘラ、が、すぐにもゲラゲラ、の下品な笑いになりそうで、
俺は閉口した顔をした。
奴はそれを見て、半笑いのままで笑いを収めて、

「……何でそんなしょんぼりしてるんです?」

「お前が俺をおちょくってばっかりだからだよ!!」

至極不思議そうになされた問いに、とても自然に答えてやった。
ああ、腹は立つし……、
怪我は気になるし……、
こんな時でも髪はサラツヤだし……、
俺の雑念がぐちゃぐちゃしすぎて、何かもう泣きそうになってきた。

「も、今日は俺は帰るわ。早く治せよ」

「え? まだいいじゃないですか……」

ベッド脇の椅子に座る間もなく、持ってきた荷物を近くの荷台に積んで、
笑みを含んだ声を背に、入る為に開けて閉めても居なかったドアを、
出る為に閉めた。ジャコーはなんも言わなかった。
その日は近くの歓楽街に飛んだ。


話し上手で聞き上手のオネエチャン達が居るお店で、
俺はカシスオレンジなんつー甘ったるいもんを飲んでいた。
俺の憂鬱そうな表情に、多分一番年かさの女が話しかけてくる。
俺より年上だと思うけど、中々いい体型だ。悪くねえ。
「兄さんアンニュイな顔しちゃってどしたのよ」
「べっつに普通だよ。仕事が上手く行かなかっただけ。
 それより姐さん色っぺえな! モテんだろ」
こんな感じでアホな話して気分持ち上げて。
酒飲んで女抱いて気持よくしてもらって。
少し落ち着いた。
年かさの女の言うことにはな、俺の話だと、
ジャコーが俺を友達として認めてないから憂鬱なんだろうって。
……つまり、俺はジャコーと友達でいてえってことらしく、
非常に認めがたい事実ながら――


でもそうだわ。
ジャコーが裏社会の人間じゃなきゃ良かったのに。
唯の冒険者で、俺はワイバーンで運ぶだけで、
あいつもヤバめの依頼なんかは選んで避けて、
単に顔が綺麗だからなんだろうか、
金髪が綺麗だからなんだろうか、
笑顔が、綺麗だからなんだろうか、
花街を出て、いつもの安宿に戻りながら、
ジャコーへの好意を胸にしっかりと刻み込まれた夜だったんだ。

                          ~続く~
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